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げんばまきこの書きしごとなど、ぽつぽつ集めてみました


by hitohiroya

連載  笑う! 田舎暮らし  「おサル」

コープ自然派連合機関紙タブル10月号掲載 

 夏の出来事。「うちのはたけがたいへん さるにほられた(いも) さきにいってるよ じゃあ」。外出から帰ると、玄関に娘の書いた置き手紙が。「あちゃ〜っ、やられたか〜」。急いで長靴はいて畑へ急ぐと、先に来ていた連れ合いと娘が荒らされた畑で、抜かれたサツマイモの苗を植え直していた。
 「あ〜あ、まだ芋ついてないのに〜」。片っ端からサツマイモの苗は抜かれて、見るも無惨に踏み荒らしてある。ネットで覆いもしていたのに、くやし〜。まあよく考えればサルは手先も器用だし人間より力もある。ネットくらいやすやすとくぐり抜けるし引きちぎることもできるのだ。それでも発見が早かったので、その日遅くまでかかって植え直した芋はその後なんとか持ち直した。
 このごろのサルは賢いらしい。山の上に住むばあちゃんが、よそ行きの服を着て家を出るとたちまち畑が荒らされるそうだ。「ありゃあ、留守になるんがようわかっとるんじゃ」とばあちゃん。畑の野菜だけではない、カキやスモモがちょうど食べごろになり、「明日採るか」と思っていると、その日のうちに盗られてしまう。軒に干してある干し柿でも大根でも、ひょいっと盗っては小脇に抱えて堂々と吊り橋わたって帰っていく。「わしら、おサルさんの残りもんもろうて食べとるわ」とばあちゃんは苦笑い。
 ここ近年、サルだけでなくシカ、ハクビシン、キツネの獣害もひどい。「山に食べるもんがないんじゃろ」と山のシ(人)たちは言う。「昔は実のなる木がいっぱいあったんじゃがの。わしらも子どもんときは山行っては山栗だのケンポナシだの、採ってきては食べたけんど、今あ、ほれ」と、取り巻く杉の山々を見上げる。拡大造林計画の杉山もしかり、タヌキしかいなかったタヌキ王国四国に、ウサギを駆除するキツネをいれたのも人間なのだから、すべてはつまり、自然のしっぺ返しなのかもしれない。
 しかしながら、おサルさんたちのためにせっせと畑仕事にはげむほど、私は人間ができていないので、これから収穫を控え、万全の体制で野菜を守らねばならない。サツマイモも収穫間近、黒大豆も膨らんできた。これまで周りだけ覆っていた防除ネットを上部にも、手が入らないように目の細かいものを、すぐ破られてしまわないよう丈夫な素材で。そうなるとネット代もバカにならない訳で…。相当高いイモにつきそうだ。水、食べ物、空気、すべてにおいて言えるかも。人間の傲慢は結局はリスクの方が大きくなる。
by hitohiroya | 2007-10-01 07:08 | my works